『はじまりのうた』/別れの理由はまさに「音楽性の違い」?

この記事はネタバレを含みますので未見の方はご注意ください。

Are you ready for the last act?
To take a step you can't take back?
覚悟はあるの?最後の一歩よ
後戻りはできない
Keira Knightley - "A Step You Can’t Take Back"

これは、ジョン・カーニー監督作『はじまりのうた』の冒頭で、キーラ・ナイトレイ演じるグレタが歌っている曲である。さて、歌詞にある「覚悟」とは何かというと、地下鉄の線路を走ってくる電車に飛び込む「覚悟」である。


落ち目の音楽プロデューサー・ダン(マーク・ラファロ)は、家庭も上手くいっておらず酔っ払った地下鉄で自殺を考える。そんな時、ふらりと訪れた小さなバーでこの曲を歌うグレタに出会う。自らの境遇に共通点を感じたのだろうか、彼女の才能に惚れ込み声をかけるところから物語が始まっていく。


▼予告編

 

グレタがミュージシャンのデイヴ(アダム・レヴィーン)のコンサートに行くシーン。彼女が出ていってしまうことがどうしても腑に落ちず何度も見返した。

これに関して、監督インタビュー(*1)では以下のように言及されている。

"I think in the film Greta is more of a writer than a performer~"
「この映画の中で、グレタは歌手というよりは作曲家だと思う(後略)。」


もともと「自分(達)のための音楽」と言っていたグレタに対して、デイヴは「音楽は、みんなで共有するもの」との考えを持っている。つまり、監督の言うところの「作曲家」的な考え方をしているのがグレタ、「歌手」的な考え方をしているのがデイヴだろう。ベンチで再会するシーンでも、その考え方の違いから対立しているように思える。

そして、腑に落ちなかったコンサートのシーンだ。グレタは「自分達の曲」ではなく「みんなの曲」となった"Lost Star"がどれだけ人に愛されているかを知り、自らも新たな一歩を踏み出すために出ていったのではないだろうか。

 

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主演の二人を絶妙な距離感に留まらせるのは、前作『ONCE ダブリンの街角で』を思い出させる。今作の終盤シーンではダン、グレタともに何か言いたげな様子だが、なにも言わないまま別れる。キスシーンも撮影したが、カットされたとの噂だ。(Pictures: Keira Knightley and Mark Ruffalo Kissing on 'Can a Song Save Your Life?')この写真の服装を見る限りだと、前述した別れのシーンだよね。

個人的には、この二人が恋愛関係にならなくてよかったと思う。ものすごく絶妙なバランスのもとに成り立っていて、キスシーンが入ることによって話の内容が大きく変わってしまうと思うからだ。

『はじまりのうた』、サントラも素晴らしいので、未見の方がいたら是非観てほしい。

もともとFilmarksで書いていたレビューをブログに載せてみるかと気軽に書き始めたのだが、すごく長い記事になってしまった。

 

(*1)Interview: John Carney "Begin Again" - Blog - The Film Experience